ヨシオにとって、後期試験の期間はあっという間に過ぎ去って行った。
「たむら荘」の先輩方の協力や攻略本の手助けもあって、テスト勉強もそれなりにやってテストに臨むことができた。
テストの最終日。 最後のテストも無事に終了して、帰り際に地質学科の掲示板を覗いてみると、 今日の日付でT先生から呼び出しが掛かっている。
(ペンプロッタが届いたんだ!) (ヨシオ)
早速、T先生の研究室に向かうと、研究室の前にはローマ字で「Graphtec PEN-PLOTTER」と描かれた大きな段ボール箱が鎮座していた。
「おぅ!早速来たな。 届いてるぞ。」 (T先生)
T先生とヨシオは、ペンプロッタの梱包を解いてみた。
製品はA3サイズの用紙が余裕で設置できる広さである。 そのほかに、ユーザーズマニュアルが1冊と RS-232Cケーブルと言うのが付属していた。
どうやらRS-232Cケーブルでパソコンとペンプロッタを接続するらしい。
「どうやって動かすんだ? 分かるか?...ヨシオ。」 (T先生)
T先生はペンプロッタ本体を舐めまわすかのように、本体のあちらこちらをいじってみている。
「先生。 まず説明書見ましょう。」 (ヨシオ)
「おぉ!そうだな。」 (T先生)
実は、T先生はコンピュータにあまり詳しくない。また興味も無い。
そんなT先生が何故Commodore 64を購入したかと言うと、共同研究をしている他大学の研究者の方が 開発したプログラムを使う必要があって購入したと言うことだった。
「それ以外に使ってないし、次に使うのは2年後だから...」 (T先生)
それでヨシオに貸してやってもいい...ということらしい。
ペンプロッタのマニュアルを見て、おおよその流れは何となく分かる。 初めて見るBASICのコマンドも何個かあったが、それほど難しくはなさそうだ。
ヨシオはマニュアルを頼りに、パソコンとペンプロッタを接続するRS-232Cコネクタの位置を確認した。
「よし、ここだな。 ここにこのケーブルを挿して...」 (ヨシオ)
ヨシオはRS-232Cケーブルのもう一方の先端を持ってCommodore 64の方に近づいた。
「さて、パソコン側のRS-232Cはと...どこだ?」 (ヨシオ)
ヨシオはCommodore 64の背面に廻り込んでRS-232C端子を探してみたのだが、どうもそれらしき端子が見つからない。
「先生、Commodore 64のRS232-Cのコネクタはどこに付いてますか?」 (ヨシオ)
「わからん!...オレに訊くな!」 (T先生)
(訊くだけ無駄だった...) (ヨシオ)
「それじゃ先生、Commodore 64の取扱説明書はどこですか?」 (ヨシオ)
(マニュアルなんて言わない方がマシだろう...) (ヨシオ)
「えっ! 説明書があるのか?」 (T先生)
(やれやれ...) (ヨシオ)