我が青春のコンピュータ


28 軌道計算3

12月になった。カワイ先輩の軌道計算も順調に進んでいる。卒論の提出期限にも十分に間に合いそうだ。

ヨシオにも、ほぼ毎日地物研に姿を現してはカワイ先輩に教えを乞うた成果が現れ始めた。

軌道計算プログラムの全容は、まだ理解し切れてはいないが、PC-1211のBASICの機能については、ほぼすべてを把握できた。

また、この頃には理数系の授業で出された課題のうち、コンピュータで処理できそうな幾つかの問題について、プログラムを作るようにもなっていた。


ついに、カワイ先輩の軌道計算作業が終了日を迎えた。  大量のカセットテープの入れ替え作業を、地物研の2回生たちやヨシオも手伝ってきた。

「みんなありがとう! いよいよ最後の1本だ!」 (カワイ先輩)

実は、最後の1本を処理するプログラムを、後輩たちは密かに改造していた。

「ジジジジ...ジジジ...」

ついに、最後の1本の計算結果が出力され始めた。

終わった!

カワイ先輩が紙テープを切り取ろうとした瞬間、再びプリンタが動き出した。

「んっ! 何だ...?」 (カワイ先輩)

(始まった...!) (ヨシオ)

紙テープには次のように印刷されていた。

PC-1211は、文字しか印刷できない。

しかも、アルファベットの大文字と数字と一部の記号しか印刷できなかった。  プリンタに印刷できる文字数も、1行に24文字までである。


1ヶ月の短期間ではあったが、カワイ先輩の卒業論文の手伝いを通じて、 3人の後輩たちはどことなく成長したようである。

その夜、大学の近くにある 「居酒屋 一光」 には、テープ入れ替えの戦いに勝利して祝杯を交わす4人の姿があった。