我が青春のコンピュータ


27 軌道計算2

待つこと30分余り。 突然ヨシオのPC-1211のプリンタが動き始めた。

「やっと出てきましたね!」 (ヨシオ)

「どれどれ、計算結果は合ってるかな?」 (カワイ先輩)

カワイ先輩は既にカワイ先輩のPC-1211で計算済みの印刷結果と照合し始めた。

「よし!合格だ! それじゃ作業に入ろう!」 (カワイ先輩)

カワイ先輩は別の初期データの入った何本かのカセットテープ を持ち出して来て、2台のPC-1211に読み込ませた。

「ホントにこれで楽になるよ! 改めてありがとう!」 (カワイ先輩)

ヨシオは恐縮する事しきりである。   (^_^;)>

「ところで、今計算してるのがこれなんだ!」 (カワイ先輩)

カワイ先輩は机の上においてあった連続帳票の分厚い束をヨシオの前に置いた。 その中身はFORTRANで書かれた軌道計算のプログラムリストだ。

「うわーっ!すごい分量ですね!一体何行あるんですか?」 (ヨシオ)

「約3,000行あるよ。これでも随分短くしたんだけどね。」 (カワイ先輩)

要するに、3,000枚ものパンチカードを入力ミス無く打ち込んでいるのだ。 これをカード穿孔機で打ち込むには相当な努力が必要であっただろう。


「ヨシオ君は軌道計算に興味あるかな?」 (カワイ先輩)

ヨシオは中学生の頃から「 天文ガイド 」という月刊誌を購読していて、 新彗星の発見時にアマチュアの コメットハンターIAU などから発表される彗星の 軌道要素を時たま目にしていた。 しかし、それらの軌道要素からどのようにして彗星の位置を計算するのかは解らなかった。

「はい! 興味あります!」   (^o^)/;  (ヨシオ)

「それじゃあ、このリストとこの本を貸してあげるから勉強してごらん。」 (カワイ先輩)

カワイ先輩は、先程のプログラムリストに加えて、2冊の本をヨシオに手渡した。

それは、長沢 工 著 「天体の位置計算」と 長谷川 一郎 著 「天文計算入門」という本だった。

どちらも非常に複雑な数式で埋め尽くされてはいたが、 「ケプラーの第3法則」など、地学好きのヨシオにも慣れ親しんだ用語も 散見される。

(よーし...一つやってみるか!)

その後の約1ヶ月間、ヨシオはカワイ先輩の研究室に足繁く通っては、カワイ先輩に軌道計算のプログラミングに関する質問を繰り返す日々を送ることとなる。