我が青春のコンピュータ


24 星空観望会3

「だけど、たむら荘で4年間遣り上げたら相当な人材になるだろうなぁ! あそこは色々な情報が集まるし、優秀なやつが多いよね。」(カワイ先輩)

「でも...どう考えても変な人が多いんですけど...」(;T_T;)(ヨシオ)

「確かに変人の集まりだから、大変なこともあると思うけど、 あそこのディスカッションに参加してたら、普通の授業だけでは絶対に味わえない物を得られると思うよ。  実は3回生まで僕も時たま、たむら荘に遊びに行ってたんだ。」(カワイ先輩)

「えぇっ!」 (;@_@;)(ヨシオ)

カワイ先輩が「たむら荘」にいる姿をヨシオはちょっと想像できない。

「201号室に4回のTがいるだろう。彼が友達さ。」

「そうなんですか!」(ヨシオ)

ヨシオはカワイさんが「たむら荘」に関係していることを知って、何となく複雑な感覚である。

図書館の中に、電磁気学の攻略本があると思うけど、あれ僕が書いたんだ。」

「え゛ぇ~~っ!」 (;@o@;)(ヨシオ)


もう何が何やら訳がわからない。 しかし、ヨシオにはカワイさんと言うこの先輩がとても 近しい存在に思えてきた。 何しろ、この素晴らしい先輩と同じポケコンを持ってるのだ ! (^_^)V

それからしばらくの間、ヨシオとカワイ先輩は共通の愛機について語り合っていたが、 カワイ先輩は時計の方をちらりと見て、少し慌てる様子でヨシオに話し出した。

「いけない、いけない! 実はキミにお願いがあるんだ。 どういうことかと言うと、 キミのPC-1211を1ヶ月ほど貸してもらいたいんだ」(カワイ先輩)

「えっ!?... ええっ...!?」(ヨシオ)

「時間が無くなっちゃったんで手短に説明すると...」(カワイ先輩)


カワイ先輩の話をまとめるとこういう事だ。

先輩は卒業論文として地球の重力異常の研究をされている。

重力異常を観測するには、まず人工衛星の実際の飛行経路(軌道)を観測し、 それと理論的な軌道計算で求められる値との差分を計算することで、間接的に求められるということだ。

計算は学内の情報処理センターにある汎用コンピュータで行っているのだが、 研究に必要な計算を行うためには多額の費用がかかってしまい、すべての計算を行うことは難しい。

そこで先輩は残りの計算を安価なポケコンで行うことを決意し、 もともとFORTRANというプログラム言語で書かれてあったプログラムを PC-1211用のBASICに書き換えて(翻訳して)対処することにした。

しかし、実際にプログラムを走らせてみると、 思いのほか計算に時間がかかってしまう。 論文の提出期限に間に合うか微妙なタイミングだ。

そこで、スケジュール的にも安心して研究を行えるよう考えついたのが、 2台のPC-1211を使って計算時間を短縮しようと言うものだった。

すぐに生協に2台目を注文したのだが人気商品のため在庫切れで、今度いつ入荷するかわからない。  他の業者にも相談したが、状況は同じだった。

クラスメートにも当たってみたが、何様人気の最新機種である。  たとえ持っていたとしても、中々1ヶ月もの長期の間、貸してくれるような人は見つからなかった。

さて、どうしようか...プログラムを改造して処理速度を速めることは出来ないだろうか?

星空観望会の準備もひと段落したので、その合間に改造してみようと思い、 ヨシオの向かい側のベンチに座って改造作業を始めたところでヨシオと遭遇したのであった。