我が青春のコンピュータ


14 ベーシック

月曜日である。授業も終わって、事務室に測量学のレポートを提出した後、ヨシオは大学生協の書籍部に足を運んだ。

「コンピュータ用語辞典」を買うためだ。 これまでその手の専門書には全く興味も無く、 コンピュータ関連のコーナーなど寄り付いたことも無いヨシオだったが、いざその場に立ってみるとさすがに唖然とした。

本の背表紙には見たことも聞いたことも無い英単語やカタカナ単語がひしめいている。

(ここで怯まない怯まない!)

勇気を奮い起こして、まずは「コンピュータ用語辞典」を探し当てた。

「5,000円かぁー...」

裏表紙に小さく印刷された金額を見て、思わずため息が漏れた。

まぁ買えなくはないが、今月苦しくなるなと思いながら「コンピュータ用語辞典」を手に取り、 どうしようかしばらく迷っていたが、その間に、居並ぶ本の背表紙の中から少しだけ見覚えのある英単語が目に入った。

「やさしく解るBASIC入門」

「あっ! マニュアルに書いてたヤツだ。」

BASICとは、ヨシオの持っているポケコンに搭載されているプログラム言語のことだ。

ヨシオは測量学の授業を通じて、このBASICというヤツが多くのパソコンにも標準で 搭載されていることだけは何とか理解していた。

「2,800円かぁー...」

またため息が漏れる。

(両方で7,800円...)と思ったが、遂にヨシオは2冊の本を抱えてレジの前に立った。  ヨシオにとって分厚いと感じられるその2冊の本を抱えながら、ヨシオは下宿へと帰って行った。

「今月は苦しいなぁ...何かアルバイト無いかなぁ...」

「7月みたいに攻略本 (これについては後述する) の仕事でもあればいいんだけど、 でも、期末テストも無いから無理だよなぁ...」

結局9月は両親からの仕送りを少しばかり増額してもらって乗り越えることとなった。