測量学の授業は2日目を迎えた。
昨日の夜遅くまでの頑張りとカルチャーショックで、学生は皆少しやつれた感じがする。 取りも直さず、教えてくださった先生が一番お疲れだったかもしれない。
授業の冒頭、先生はおもむろに次のように切り出した。
「皆さん昨日は大分頑張りましたね! ...ところで提案なんですが、測量学の勉強はこの位にしておいて、残りはコンピュータを勉強してみませんか?」
教室内に一瞬沈黙が走ったが、その後は盛大な拍手が巻き起こった。
「それでは始めますけど、皆さん関数電卓は買ったばかりのようですね? 付属品やマニュアルは持ってきていますか?」
(まにゅある...?何だ?それは?...<(?_?)>ヨシオ)
「先生スイマセン!マニュアルって何ですか?」
質問したのはヨシオではなくて他の学生だ。
(あぁ良かった!他にも知らないヤツがいるんだ!)
「マニュアルとは取扱説明書のことです。 持ってきてるかな?」
...持ってきている訳が無い! 結局全員が一度下宿に帰って付属品やマニュアルを持って、1時間後に集合することとなった。
今では笑い話のようだが、当時、大学に入学するまで電卓すら触ったことが無い者もいたのである。
商業高校では珠算検定 3級以上の取得を卒業の要件に定めているところもあった。
大学生協では携帯用の算盤(ソロバン)も販売されていた。
数学に関心のある学生でも高度な計算を行うのに 自然対数表や 計算尺を 用いていた時代である。
コンピュータの知識など、入学したばかりの学生にあろう筈も無い。
まず第一に、その頃の高等学校や一般家庭には、コンピュータなど1台もなかったのだ。